創立10周年企画「高千穂鉄道の思い出」受賞作発表
2018年11月09日

2018年春、創立10周年を迎えた高千穂あまてらす鉄道は「高千穂鉄道の思い出」について原稿を募集し、同年11月7日、最優秀作品賞1篇、優秀作品賞2篇を決定いたしました。以下に授賞者の氏名と略歴、選評を掲載させていただきます。

たくさんのご応募ありがとうございました。

受賞作

最優秀作品賞

「鉄橋へ、ふたたび」 作者:河内由美子

高千穂町大平生まれ。奈良文化女子短期大学卒。京都府在住。介護福祉士。

優秀作品賞

「母の非常停止ボタン」 作者:田崎仁志

高千穂町生まれ。宮崎県立高鍋農業高校卒。生家を継いで農業を営む。

優秀作品賞

「時の流れ」 作者:谷川由希

日之影町生まれ。大学生。

選評

最優秀作品賞 「鉄橋へ、ふたたび」

作者の河内由美子さんは、高千穂町出身。現在は京都府に暮らす。国鉄高千穂線開通前夜の「東洋一の高さ」と謳われた高千穂鉄橋の建設模様を、間近から毎日その目に映して育った。

作品は、みずみずしい子どもの時代の感受性でとらえられた完成までの出来事がエピソード満載に描かれ、大人になって恋人を伴い実家に帰省する前後の様子が情感をもって語られる。一本の鉄橋が、線路が、人間の成長や家族関係と分かちがたく結び合って存在していたことを静かに語りかけて、豊かな感情を読む側の心にひろげてくれる。味わい深い佳作である。

優秀作品賞 「母の非常停止ボタン」

作者の田崎仁志さんは、河内さんの大平とは鉄橋を挟んでお向かいの中川登で育ち、現在は同地で農業を営む。

作品は、鉄橋の上で起きた、ある〝事件〟の目撃譚とその顛末について描かれる。人間ひとりひとりの素朴なやさしさ、きりっとした運転士の行動が胸を打つ。高千穂を離れていた高校三年間の帰省シーンの描写も見事で、質の高い短篇映画を観るようだ。家族という小さな世界に、人が生まれ、助け合い、むつみ合う幸せは、世界の紛争地帯に生きる家族にも見出せるのではないだろうか。そんなことまでも想像させてくれる作品に仕上がっている。

優秀作品賞 「時の流れ」

作者の谷川由希さんは、日之影町で育ち、いまは大学生活を送っている。「卒業したら日之影に帰って町づくりに励みたい」とのこと。

こんな若い人が書いてくれたことが、なによりよろこばしいが、作品を読んでいくと、しっかりとした視点で書かれていて驚かされる。なにより文章が正直で、よけいな想念を読む側に抱かせない。幼い日、高千穂鉄道を廃線に追い込んだ台風被災の光景から書き出された文章は、鉄道にあこがれた幼女時代の薄れかけた記憶を掘り起こし、最後は現在の変わり果てたふるさとを直視して、そのゆるぎない姿勢が清々しい。


※以上3作は、今年末に創刊される私どもの協力団体「NPO法人山参会」が創刊する記録文芸誌『かなたのひと』に全文掲載されます。